阿弥陀寺の開基岩松義政公は室町時代中・後期の支配者清和源氏新田氏の一族で、千倉庄(鹿島区)に下向したのは応永13年(1406年)としており、その年をもってこの寺の創建としています。しかし、開山上人源尊は応永3年(1396年)頃にはすでに鹿島中目に於いて浄土宗阿弥陀寺を持ち布教活動をしていたといわれます。本尊を「阿弥陀如来」とする浄土宗名越派とする念仏教団であります。
つまり、岩松公が当地(千倉庄)に下向した年よりも10年以上は前に阿弥陀寺は存在しており、その後岩松公が南屋形の堂庭に源尊上人と共に堂宇を遷座し、菩提寺としました。したがって阿弥陀寺の創建は少なくとも10年以上前の応永3年とすべきであろう。
この寺には、鎌倉時代の優れた工芸品である国指定重要文化財「刺繡阿弥陀名号掛幅」をはじめ、県指定重要文化財「刺繍阿弥陀三尊来迎掛幅」、「法然上人像板木」など多くの文化財を所蔵しています。
また、境内には県緑の文化財・市指定天然記念物「阿弥陀寺の大イチョウ」があり、指定樹齢は620年~30年とされ、高さはおよそ32.5mあり立ち姿が優れている巨木です。これは寺が南屋形に遷座された時に植えられたとみられ、樹勢は旺盛で中世代の遺存植物的性格を持っています。
境内の銅鐘も市指定文化財となっています。寛延元戊辰年作の和鐘であり、江戸中期の形を表現しています。特に撞座は蓮の花弁に囲まれた、輪宝形をしています。その膨らみが豊かで美しく県内でも珍しい。